ブラッディマリー
万里亜が動機であることに対し、和は自嘲するように小さく笑った。
けれど、俊輔が万里亜と同じであるというのなら、さっさと帰ってしまうその理由はやはり──1日一度の血が欲しいからなのだろうか。
俊輔に女がいるなどという話は聞いたことがないが、彼のあの容姿と性格なら特定の相手など作る必要はないと思う。
毎日問題なく店に来るのだから、おそらくそうしてうまくやっているのだろう。
自分が気にしてやることは何もないと結論づけて、和は冷えて来た店内に気付いた。
万里亜が起きるまで待つと決め込んでいた和は、彼女の身体が冷えることを懸念し、やはりロッカーに入れたままにしていた自分の夏物のジャケットを彼女にかけてやる。
「う……ん……」
ジャケットをかける時のわずかな風が頬を撫でた為か、軽く身じろぎして、万里亜の瞼がぴくりと痙攣した。
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