ブラッディマリー
「……やだ……あの時のあたし、卑しいもん。目、紅く光って気持ち悪いし、牙だって生えて来るし、な……和に、痛い思いさせちゃう」
「……おい、何、言ってんだ……?」
拘束していた万里亜の手を離し、和は思わず彼女の背に腕を回した。
今の、何だよ。そんな言い方、まるで……。
「し、知ってるんだから……欲望に塗れたヴァンパイアの顔が、どんなに醜いか」
「おい万里亜、お前」
「やだったら! 泣いてる顔なんて見ないで!」
ずくり。
甘く疼く、この胸を。
どこか支離滅裂な万里亜の言葉と声と──涙が、これでもかと揺さぶる。
足元から震えが来て、和は同時に呼吸が苦しくなるのを感じた。
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