ブラッディマリー
 


「やっぱり、死ねばよかった。ううん、家を出るべきじゃなかった。あたしなんて、あのまま澄人兄さんに……」


「やめろって!!」




 腹の底から和が怒鳴ると、万里亜はびくりと飛び上がるように震える。



 興奮の余韻にかたかたと口唇を震わせながら、万里亜は壁の煉瓦を見つめ、乱れた呼吸に堪え切れず、ふうふうと息を漏らした。



「……泣きながら喚いて、過呼吸まで起こす気か。馬鹿」



 言う自分の声が震えたのが判った。


 万里亜の甘い香りが、鼻腔をくすぐる。すると瞳の裏側がじわりと潤み、感情が中から胸を叩いた。


 和は万里亜の身体を抱き直し、彼女の首筋に顔を埋める。

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