ブラッディマリー

恋夜

 


 昼から、雨が降っている。


 和は頭の隅に抱えた痛みを、夕方のうちから薬を飲んで抑えていた。



 和が買ってやったレーヨンのワンピースを着て、万里亜は珍しく「今夜はあたしが作る」とシンクの前に立っている。





 ──吸血した後ひたすら泣く万里亜をキスで責めた夜から、数日が過ぎていた。


 夕方前に和が目を覚ますと万里亜は既に起きてそわそわしていて、何となく気付いた。ああ、月一のアレは終わったんだな、と。


 傍を通る万里亜から、いつもの甘い香りに加えてうちのソープの香り。


 じゃあ今日は吸血じゃない方だ、と結論づけた。



 柄にもなくときめいてしまっただなんてことは、恥ずかしいので秘密にすることにして。


 少し貧血気味の和は、買い物をしたいという万里亜を一人で歩かせるわけにもいかず、寝起きのすっきりしない頭でスーパーまで付き合った。

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