ブラッディマリー
閃光の夜
気絶した女が目の前にいたらなぁ、という妄想をしたことがなかったわけではない。
けれども現実、その状況下に置かれると、妄想したことは何ひとつ実行出来なかった。
和はそんな不甲斐なさと辛うじて守った男のプライドとを天秤にかけながら、溜め息をついた。
女に不自由しているかしていないかということと、それは別物だったからだ。
──そんな和の視線の先に、彼女がいる。
殺風景な部屋、フローリングにぺたりと座り、じっと和を見つめ返していた。
雨音だけが響く、和の部屋。
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