ブラッディマリー
 


「……いや、いらね」


「じゃ、今日買ったアイスいる? ミルクバーの」



 ……ミルク。


 和が言葉を発することなく頷くと万里亜はにこりと笑って、ひらひらは遠ざかって行った。



 ……馬鹿じゃねーの、俺。



 意味なく煙草をぱかぱかと蒸しながら、和は万里亜にかからないよう横吹きで煙を吐き出す。


 水商売でついた癖だが、今はそれが有り難い。



 週に一度の休みの今日だけ見られる、ゴールデンタイムのバラエティがテレビから流れていた。


 万里亜はそれを見ながらアイスを咥えている。


 ミルクバーを口に含む、その瞬間がやけに目の毒になる。

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