ブラッディマリー
「だってお父さん、しょっちゅうお母さん殴ってたから……お、お母さんの恋人は、いつもそんなお母さんの話を聞いて、泣かせてあげてた。優しくて、いい人で。いけないって知ってたけど、お母さん、幸せじゃなかったから……」
涙で言葉に詰まった万里亜をきつく抱いて、和は眉根を寄せる。
「……お前のせいじゃないよ。兄貴とのことも、罰なんかじゃない」
確かな声でそう言った和を、万里亜は涙を拭いもせずに見上げた。
その呼吸が詰まっているのを知るや、和は万里亜の背を軽く叩いてしゃくり上げさせる。ひっく、と息を吐き出した万里亜を確認すると、和はその口唇に軽く口づけた。
「母親の幸せを願っただけのお前に、罪なんてない。ヴァンパイアに生まれたことも、万里亜のせいじゃない」
万里亜の身体が小さく震えた。和はその首筋に指先を這わせ、万里亜の頭を抱えるように撫でる。
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