ブラッディマリー
一瞬遅れて、さっき掠めた頬に熱い痛みが走る。
和は驚きつつ、ちっと舌打ちをした。左手で拭うと、真っ赤な血。
「……万里亜いないのに、もったいないことしやがって……」
「これでも、腹が煮え繰り返って仕方がないのを抑えてるんだがな。……可愛い妹が黒澤の息子に好きなようにされてるんだ」
「何?」
澄人はカウンターの前まで歩み寄ると、薄く浮かべていた笑いをふと止める。
「黒澤敬吾の息子のくせに、白城という名を聞いたことがないのか?」
「……何も興味がなかったからな」
手についた血を舌で嘗め取り、和は澄人を睨み付けた。鉄の味が舌の上に広がり、苦々しく感じる。
澄人はその様子を面白そうに眺めると、口唇をぺろりと嘗めた。
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