ブラッディマリー

突き刺さる牙






 ──始めから、父親が嫌いな子どもなんているものか。



 黒澤敬吾という男は、決して子煩悩ではなかったように思う。けれど、邪険に扱われた覚えもなかった。



 君子が夜な夜な隠れて泣くようになった頃と、敬吾がどこか線を引くような態度を示すようになった頃と──今思えば、重なっていたような。



 思い出の中の母は、いつも父親に泣かされていて……。


 ……。



 何で母さんはいつも泣いてたんだ……?




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