ブラッディマリー
「嫌じゃなきゃ、ベッド使っていいよ。俺そこらで寝るから」
「……そんな……シャワーと服、借りちゃって。あたしが床で寝るから、あなたは」
「和」
「え?」
「アナタ、とか気持ち悪い。呼び捨てていいから、和」
無愛想な和に閉口すると、万里亜はペットボトルのミネラルウォーターをごくごくと飲む。その音がやたら耳について、和は部屋の隅にそのまま置かれたコンポのスイッチを入れた。
流れ出したのは、ボリュームを絞ったロック。
「俺、シャワー浴びるから。その間に寝たら」
「……」
万里亜の無言の視線を背中に受けながら、和は立ち上がった。
「……何で、訊かないの?」
万里亜の尖った声が、そのまま和の背中に突き刺さる。その声には、和を逃がすまいとする意志が込められていた。
和は静かに、顔だけで振り返る。
「……は?」
.