ブラッディマリー
 

 さっき和を抱き起こした時に手についた血がぬるりと滑り、俊輔はそれをぺろりと嘗める。その瞳が、薄暗い紅に染まった。



「……俊さん……!」



 共鳴するように、抑えていた万里亜の瞳も紅く輝いた。



「……そう。和はもう知ってるけどね」



 にっと笑った俊輔は、万里亜から手を離すと、和の額に触れる。



「だけど、知らないこともある」


「どういうこと……?」



 鼻をつく和の血の匂い。



 よく知ったその匂いに欲望と愛しさが交互に突き上げて、昂揚せずにはおれない自分に、嫌気がさす。


 けれど、落ち着き払った目の前の俊輔がただ不気味で、万里亜は足を一歩踏み出した。


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