ブラッディマリー
「このままだと、確実に死ぬだろうけど……」
俊輔は和の手を取り、片手の力だけでその上半身を引き上げると、妖しい光を宿した瞳で万里亜を見つめた。
「俺なら、和を助けられる」
その言葉に、万里亜ははっと目を見開いた。
助かる筈のない和が助かる方法は、ひとつしか思い付かない。
それは、万里亜には絶対に出来ないこと。
「俊さん、あなた……直系、なんですね」
俊輔は口唇から牙をちらつかせ、和の手首に頬を寄せながら穏やかに微笑んだ。
「正解」
掴んだ和の手をするりと解いてカウンターに寝かせると、俊輔は昏い瞳を床に落とした。
「だけど、そうして和を助けて、彼は喜ぶかな? ……せっかく、楽な人間に産まれたのに」
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