ブラッディマリー
古い痛み
「……は……っ……あ、あぁ……」
苦しそうに喘ぐ万里亜の声が、痺れた意識を彩るように響く。
じゅるり、と夢中で啜り上げると、抱きしめた細い身体がびくりとしなった。
どこか白濁とした、頭の中。
──ようやく自分が何をしているのか気付いた。
弾かれたように、今まで必死に食らいついていた“それ”から身を引く。
浅く速い、自分の呼吸。虚ろに涙を零す万里亜の顔が、そこにあった。
抱きしめるその感触で、万里亜の身体から力が失われていることが判る。
「万里亜……」
喋りながら、自分の口唇に滑らかに尖った感触。
見なくとも判る──これは、牙。
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