ブラッディマリー
「お前の事情なんか知らないよ。だったら、俺の前で倒れんな」
そうして万里亜の手を振り払って、シャワーで妙な熱を洗い流すつもり──だった。
「ダメ。ガマン出来ない」
万里亜の細い指が和の腰に回され、その身体が背に押し付けられる。スウェット越しに感じる柔らかな胸の感触が、酔った和の理性を乱暴に揺さぶった。
女には不自由していない。胸の感触くらいで勃つ程、もう珍しくもなかった。
そもそも、本当はその手の欲だって薄い方だと、自分では思っていた。
だのに、この突き上げる衝動は、何だ。
こんな、鉄がぐらぐらと熔けているような熱さは、思春期の頃でも覚えがなかった。
「和……」
万里亜の細い指先が和のTシャツをめくり上げ、腹筋をするりと撫でた。
──ああ、もう。
行きずりの女なんて、珍しくもないじゃないか。
どうにでも、なれ──。
和は万里亜の手を掴むと、そのまま振り返って抱き寄せた。
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