ブラッディマリー
「ここ、が?」
タクシーを降りて、つばの広がった帽子の中から、万里亜はそれを見上げた。
黒澤邸。
名前をそのまま表すような、黒を基調とした重々しい洋館に、万里亜は少し圧倒される。
万里亜の着ている、エメラルドグリーンのゴシックワンピース。それがよく似合うな、と思いながら和は頷いた。
「6年ぶり……かな」
万里亜は和を振り返ると、何か言おうとして──言葉を失った。
“HEAVEN”で疲れ果てるまで睦み合った後、万里亜が聞きたがった為、和は家を出た理由を話した。
生まれてからここまで、それぞれ違う道をたどった筈なのに、欠落したものや感じて来た痛みは同じだね……と万里亜は儚げに微笑んだ。
万里亜のその顔を見て、和は決めたのだ。
ヴァンパイアとして目覚める時見た夢のことを確かめたいと。
──母は一体誰の子を産んだのかと。
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