ブラッディマリー
いきなり敬吾に会うことを避けたかった和の気持ちを察したのか、西成は眉尻を下げて困ったように微笑む。
「マスコミや取り巻きの方々には隠しておいでですが、近頃旦那様は、呼吸が苦しくなる発作が度々……」
「……そんなやわな男だったっけ?」
どこか棘のある和の言葉を、同じようにベッドの隣に座る万里亜が彼の手を軽く叩いて諌めた。和は少しばつの悪そうな表情を浮かべると、肩をすくめる。
「……和様が出て行かれてから、旦那様はかなり気落ちされているようでした」
「……歳くった、ってことか」
どうにも落ち着かず、和は煙草に火を点けた。
それを見た西成は、目を丸くする。
「和様……!」
西成は慌ててドアを開けると、廊下の他の使用人に灰皿を用意させた。
「お吸いになられるとは思いませんで、申し訳ありません。欠かさず用意させておきます」
「……悪い。家出てから覚えたんだっけ、俺」
くつくつと笑った和に、西成もつられて笑う。
.