ブラッディマリー
 


「お前……戻って来た……のか?」


「……いや、訊きたいことがあって、来ただけだ。何があった!?」


「見ての通りだ。襲われた。運転手は儂を庇ってやられた。だから何とか儂が車を動かして来た」


「誰に!!」


「……さあな。恨まれる覚えがあり過ぎて、見当もつかん」



「じゃあ、これは何だ!」



 和は運転手の死体をごろりと仰向けにすると、その首を指差した。



「……あんた、何もかも知ってる筈だ。だから俺も、訊きに来た」



 運転手の首に、隠す気のない二つの傷痕。


 ヴァンパイアの牙の痕──だった。




.
< 214 / 381 >

この作品をシェア

pagetop