ブラッディマリー
「お前は儂の子ではない。だが、お前は間違いなく君子が産んだ子だ」
敬吾はどこか懐かしそうな瞳をして、そう言った。そこに後悔はないようだった。
万里亜が背後で「そんな……」と小さく声を漏らしたが、和は軽く振り返って微笑む。
最初から仲の良くない親子だったからなのだろうか、それともヴァンパイアとして目覚めた時にもうその確信があったからなのだろうか──面と向かって『息子ではない』と言われても、それ程ショックだと感じないのは。
そんな和を見ながら、敬吾も判っているようだった。
「君子には……あれには本当に、可哀相なことをした。儂があれに頼んだのだ、黒澤の子を産んでくれと」
「黒澤の……?」
和が眉をひそめると、敬吾はその厳しい目元をふっと緩める。
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