ブラッディマリー
そうして万里亜は少し後退すると、閉められていた部屋のドアをゆっくりと開ける。
「──!」
タイミングをすっかり合わせたように、開かれたドアから部屋に黒い影が滑り込んだ。霧のように現れたその人物に、和は戦慄を覚える。
光沢のあるダークグレーのスーツは、初めてその人を見た夜のものと同じだった。後ろに流した髪は幾筋か額に垂らされて、目元に涼やかな影を落としている。
白城澄人。万里亜の腹違いの兄──。
澄人の姿を見て、万里亜は目元を綻ばせる。誰が何を言ったわけでもないのに、和は兄妹が並んだその姿を見て、判ってしまった。
ああ、こいつらは初めからデキていたんだ、と。
何故だかは判らない。自分と万里亜が関わらなければならなかった理由も想像などできない。だからこれは、勘でしかなかった。限りなく確信に近い。
万里亜は澄人の傍に寄り添い、その肩に甘えるように頭を預けた。
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