ブラッディマリー
「やっちゃったって──何を……?」
和にしがみついたまま動けずにいる万里亜は、視線から逃れるように俯く。
その仕草はさっき男を誘った時の妖しさとはかけ離れていて、年相応の少女らしさを感じさせた。
「……判らなかった?」
万里亜は蚊の鳴くような声でぼそり、と答える。
「ここ……」
するり、と万里亜が撫でたのは、和の首筋。
「……?」
万里亜の指が滑ったところを、自分でそっとなぞってみた。少し熱を帯びて、じんと痺れているような気がした。
「首が……何だ?」
万里亜はごくり、と息を飲むと口を開いた。
「あたしね……人間とは、少し違うの」
突飛もない万里亜の言葉を、和は思わず鼻で笑った。
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