ブラッディマリー
「おい……!」
「わ、儂に構うな、気が昂ぶって、吐き気がしただけだ……それより、じ、銃を……」
言われて拾い上げようとした瞬間、銃は弾かれたように部屋の隅へと転がって行く。和の腰の傷を庇いながらの緩慢な動作では、澄人の能力に追いつかなかった。
それはまるで、今の自分のようだと思った。
いつの間に、そんなに思い上がっていたのかは判らない。
けれど、万里亜はもう自分のものだと思っていて。
そう、例えば少し距離ができたところで、手を伸ばしてみれば届くものだと思っていて。
今弾かれた重い無機物のように、簡単に遠くへ持ち去られるものだとは思わなかったのだ。
もっともそれこそが勘違いで、はなから自分のものですらなかったのかもしれないけれど。
するとそんな和の思考の巡りを読み取ったかのように、澄人は静かな声で語り始めた。
「私の目的はね、そうして覚醒した君自身だ。黒澤和」
「なっ、に……!?」
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