ブラッディマリー
 

 どくん、どくん……と脈打つごとに、自分の身体から血が流れ出していくのが判る。


 そう、本来ならこんな傷を負って、人の話を冷静に聞ける筈などないのだけれど──。



 異常なほど冴え渡った神経が、目の前の事象を何一つ見逃すな、と伝えてくる。


 機会を見逃すな、と。



 眼球の裏が痛くなるほど目を開いて、和は澄人を見据えた。



「黒澤が潰れれば、この日本のヴァンパイアは白城家だけになる。私は、白城家に永遠の繁栄をもたらしたいのだよ」


「何……?」


「うちの百合亜の話は、もう聞いているか?」



 白城百合亜。白城家の、純血ヴァンパイア──。



「それが、どうした」


「百合亜は、私の母でもあるのだがね。同時に、私の女でもあった」


「……!?」



 母であり、女……?



 冷静に考え、その言葉の意味のおぞましさに和は顔を歪める。

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