ブラッディマリー

止まない雨

 




 ──いつもなら、見過ごしたであろうその光景。



 万里亜と初めて出会った夜のことが、和の脳裏にフラッシュバックで甦る。


 街灯の下、激しい雨に打たれながら振り返った少女は、息を飲む程美しかった。



 取り巻くすべてを煩わしく面倒だと感じて生きていた自分が、どうしてあの瞬間、彼女と関わることを躊躇わなかったのだろうか。



 ヴァンパイアは、一目で人間を惹き付けてしまうから?


 いいや、そんな単純な話じゃない。



 とめどなく流れ落ちる雨の雫で、あの夜には気付けなかったけれど──。




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