ブラッディマリー
 

 忌々しげに舌打ちをして、澄人は紅く光る瞳を見開いた。



 すると、俊輔が開けたのであろう窓硝子が、一斉にパァンと激しい音を立てて砕け散る。その硝子の欠片は一斉に和と俊輔に降り注いだ。


 ──筈、だった。



 俊輔が怠そうに小さく首を傾げると、硝子片がすべて空中でぴたり、と止まった。


 頭では判っていてもそんな光景を見慣れていない和は驚いて息を飲み、外からの僅かな明かりできらきらと輝く硝子片を見つめる。



「……ったく、品のない。ヴァンパイアがみんなぼうやみたいなんだと思われたら迷惑だから、やめてくんない」


「うるさい!」


「百合亜は奔放だったけど、素直で可愛い女だったのに。たまには見習え、ぼうや」


「うるさいと言っている! 黒澤はみんな死ね!!」



 その場の空気を切り裂くように澄人が手を振りかざすと突風が吹き抜け、一瞬和達の視界が遮られる。

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