ブラッディマリー
 


「違うって、どこが」


「あたし……」



 何かに酔ったように潤んだ万里亜の瞳は、満足そうに揺れている。



 最後までしていないのに、今日“HEAVEN”に連れ込んだ女がしていた表情と同じものが、万里亜の顔に現れていた。



 万里亜の指先が、また和の首をなぞる。





「あたし、今──ここから和の血を貰ってたの」





 血を、だって──?



 和は今言われたことの意味を理解できず、万里亜を見つめた。


 確かに万里亜の口唇が触れたところは、虫刺されの痕のように小さく腫れているけれど、首筋から血を貰うだなんて、本や映画の中でしか出て来ない話だろう。

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