ブラッディマリー
それでもなんとか目を開いた瞬間黒いふたつの気配が通り過ぎ、窓から外へ飛び出す澄人と万里亜の姿が見えた。
万里亜の紅い瞳は、真っすぐに和を見つめている。けれど、そこには何の感情も映し出されてはいなかった。
「万里亜!!」
慌てて後を追おうとした和は、踏み出した力の勢いで数歩進んだだけで身体を支え切れず、その場に膝をつく。
「逃げたか。ま、仕方ないか……ほら和、無理すんな」
さっと差し出された、俊輔のしなやかな指先。そこから視線を辿って、和は改めて彼の顔を見上げた。
──自分と10ほどしか変わらないように見えるこの男が、自分の本当の父親……。
生い立ちの不思議で思いつめる程、モラトリアムではない。
けれど、それでも今までそうだと信じてきたことが覆された驚きと、その事実にすぐに馴染めない違和感に、和は顔をしかめた。
.