ブラッディマリー
 


「……う……ん、ふ……っ」



 無防備に身体を預けるその女の首から口唇を離すと、和はようやく冷静な思考を取り戻した。



 人間の女の血を口にするのは初めてだったが、やはり万里亜の血とは香りも濃さも、その何もかもが数段劣る。


 和は自分の腕の中でうっとりとまどろみ始めた女の様子を見下ろしながら、吸血されるという行為が人にとってそう不快な現象ではないということを悟った。


 それでも胸の中に広がる嫌悪感は、もう自分でもどうしようもない。


 回復をはかる為とはいえ、見知らぬ女をこうして腕に抱いていること、その血を見境なく啜り上げたこと、今の状況の何もかもがひたすら気持ち悪い。



 が、差し出されたこの女を拒否する余裕などなかった。




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