ブラッディマリー
 


「敬吾。あんた、偉くなったもんだな。どうやってこの娘、言いくるめた」


「手の内を晒すことはしない主義なんでね」



 俊輔は皮肉な笑みを敬吾に向け、ふらつく和と女に奥の部屋に続くドアを示す。



「じろじろ見られたいものでもないだろ。あっちで済ませて来い」



 女の甘い血のにおいで、頭がクラクラする──。


 その善し悪しを考える前に和は浮かされたように女の細い手首を掴み、促されるまま奥の部屋へと駆け込んだ。



 ドアが閉まる音を合図に、女の身体を抱き寄せ、その首に牙を突き立てていた。女の反応は飼い慣らされた犬のように従順で、欲求のままに抱きすくめる和の腕に甘えるような仕草さえ見せた。


 さすがに身体まで貪ることなく、少しの血で事足りたけれど。


 さっきまで熱く疼いていた腰の傷の血はすぐに止まって、和は嫌々溜め息をつく。

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