ブラッディマリー
 


「……今度こそ、これきりになるぞ」


「でも、これなら和さんが接してきたどの女の人とも違う女になれるでしょう?」


「だからって、よくこんなこと承知したな。頭から取って食われるとか思わなかったか?」


「それならそれでいいと思ってますよ……今でも。ねえ、奥さんになろうなんて思ってません。私、来年結婚が決まってるんです。今後あなたの迷惑にはなりません。だから……」


「……じゃあ、今度こそ覚えておくから、名前」



「教えません。名前も知らないけど、はしたないどこかの変な娘がこうして血と身体を捧げにやって来たこと──和さんも今度は忘れないでしょう? それが、いいんです」



 自分のしでかしてきた罪の残骸を前に、和は半ばあきらめの境地で女の腰に腕を回し、そのうなじに顔を埋めた。



 責めるように窓に打ちつけられる雨の音。


 さっきの頭痛がまた戻ってきて、和は快楽に喘ぐ女の口を手で塞ぎながら、目を閉じた。









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