ブラッディマリー
万里亜にとってセックスは、血を求めて渇く喉の痛みを癒す為の行為でしかなかった。
けれど、ヴァンパイアにとってそんなことは珍しいことではない。
人間とて、本当に喉が渇いた時に飲むのは水だろうと何だろうと構わないはずだ。
相手にもよるのだろうが、セックスは面倒で疲れる。だからできれば、短時間で済む吸血行為の方がいい。
万里亜にとっては、その程度の認識でしかなかった。
けれど澄人はそれを同時に行うことが好きらしく、万里亜はずっとその嗜好に付き合わされてきた。だから、少し珍しかったのだ。
女の身体や気持ちを気遣い、苦痛のないように振舞ってくれた、黒澤和という男が。
今までも、兄の言うままに知らない男に近付いて、全てを奪うということをしてきた。
楽しくも何ともない。ただ、この容姿に騙されて勝手に溺れ出す男達の姿を、馬鹿馬鹿しいと思いながら見つめていただけ。
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