ブラッディマリー
 

 拒否したら、きっとこれより痛いことをされるのだ。本能的にそう察していたから、万里亜は黙ってただ澄人を迎え入れていた。


 澄人がいない夜には、彼との関係を察した父親が手を上げる為に万里亜の部屋を訪れた。


 お前も母親と同じなのか、男なら、雄なら何でも構わないのかと、罵声をぶつけられて。



 意味が判らなかった。気付いているなら、どうして澄人を止めてくれないのだろうか。父親、なのに。


 けれど、夜ごとあらゆる責めを受け続けた万里亜は、やがて考える、ということをしなくなった。


 目の前の状況に全てを委ね、何か不快に感じたなら、考えずに終わるまでじっと待てば、うまくいくと気付いたからだ。



 成長していく中で、髪が意思を持ったように輝き始め、大きな瞳は意味ありげに潤み出し、控え目な仕草の万里亜が、外の男の目に止まらぬわけがなかった。


 その頃から、澄人が自分に固執するようになってきた。

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