ブラッディマリー
何と言うのだろう、熱に浮かされたように抱きに来る兄を見ながら、万里亜はようやく澄人が自分におかしな感情を抱いていることを悟った。
殴りにやって来る父から庇うような言動や仕草も見られるようになった。
どうして、と訊ねてみてもよかったのかも知れないが、せっかく澄人から痛いことをされなくなったのだ。何か気持ちに変化が起きるようなことを、万里亜は口にする気にはなれなかった。
本意ではなかったとはいえ、澄人はヴァンパイアの在り方というものを骨の髄まで教え込んでくれた存在だ。
澄人は頼まなくても血をくれるし、その見返りに色々と求められることは、万里亜の中で当たり前のことになっていた。
でも。
春に17歳の誕生日を迎えた瞬間、このまま生きていていいのか、と急に思った。
きっかけは、澄人と共謀して父親を死に追いやったことからだった。
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