ブラッディマリー
 


 混血によって血の薄まった父は、ヴァンパイアとしての能力をほとんど失っていて、人間同然だった。


 けれど、どういうわけか百合亜の夫という地位におさまり、白城家を好きなように動かしてきた。


 成人し、着々と外での立場を上げていく澄人にとって、家長である父親は目の上の瘤。万里亜に暴行を加えていたことも、気に入らなかったのだろう。



 万里亜の誕生日の少し前、澄人に身体を裂かれた父親の断末魔が家中に轟いた。


 そういえば、あの夜も雨が降っていて、春雷が何度も暗い部屋を照らしていたっけ。



 そこまで考えて、万里亜はこめかみが疼くことに苛立った。


 これまでのことを考えると、決まって頭が痛くなる。



 雨の中の無茶なことでも身体は条件反射で快楽をなぞり、万里亜はたやすく意識を失った。


 その間に澄人に家まで運ばれ、もう今日は必要のない筈のことを何度も繰り返された。

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