ブラッディマリー
 

 澄人が囲っている女は自分だけではないことくらい、万里亜も知っている。


 こんな日くらい、そのうちのどこかへ行って欲しいものだけれど、口に出せばこの身体は痣だらけになるのだろう。


 そういえば和は、この身体に痕をつけたがらなかったな。


 痛みも快楽も知り尽くしたこの身体、多少のことは堪えられるのに。



 鬱血してあちこち黒ずんでいた肌は、すっかり真っ白になっていた。多分、和の血の質がよかったからだ。


 そう、それを飲めなくなることにも少しの未練が顔を覗かせる。罪悪感と一緒にやって来るから、複雑な気分だけれど。


 兄の描いたシナリオ通りにコトが運ばれて行くのなら、和はここへやってくる筈で。



 そうして身体中の血を抜かれて、死んでしまうのだ、和は。



 それを考えると、何だか心もとない気持ちになる。

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