ブラッディマリー
 

 和がわざとコツン……と足音を立てると、3人は弾かれたように顔を上げる。


 敬吾と俊輔に驚いた様子はなかったが、和を見た瞬間、尚美の顔が歪んだ。



「……助けて……助けて、助けて、和くん……!!」



 尚美の虚ろな瞳から、涙が溢れる。尚美はベッドから這い出ると、そのまま床に転がり落ちた。それでも構わず、尚美は床を四つんばいで這って来る。和は慌てて駆け寄り抱き起した。



「何があったんだよ」



 敬吾の沈んだ瞳に、一瞬気まずくなった。


 けれど、泣いて縋る尚美を突き倒すことなどできる筈もなく、和はそのまま彼女を抱き上げる。


 黙り込んで俯いた敬吾の代わりに、俊輔が呆れたように口を開いた。



「……白城澄人をここに招き入れたのは、彼女なんだと。長いこと、関係があったらしい。敬吾は本人の口からそんなこと聞かされて落ち込んでる。夫婦仲は現在最悪の事態」


「な、に?」


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