ブラッディマリー
2

獰猛な紳士

 


 薬はとっくに切れている。目覚めた瞬間、それが判った。


 頭の左側に、血管が脈打つような鈍痛。それから、まだ雨の音がしていることを確かめた。



「……っつぅ……」



 身体を起こそうとして、和は違和感を覚えた。


 胸元に圧迫感。ぼんやりした頭のままふと視線を胸元にやると、波打つ髪の毛にぎくりとした。



 人の頭が、乗っている。



 何となく記憶の隅にその理由が残ってはいたが、目で確かめる方が早い。和は散らばる髪の毛を一方向に纏めて流すと、その顔を確かめた。


 自分の方に向いていた顔を見て、一瞬で思い出す。



「……あー、万里亜……」



 昨夜は酔いがまわっていたせいか、万里亜の話を聞きながらいつの間にか眠ってしまっていた。

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