ブラッディマリー
けれど、この敬吾に関しては、どうしても許せない何かがある。
俊輔や尚美がどう敬吾を庇おうと構わないが、和は、自分と母のいたあの家庭を壊したことと、母を捨てたままにした責任を、どうしてもこの男に負わせたかった。
こういうことは、全部理屈ではないのだ。
「……あー……そのあたりの話なんだけど、ちょっと俺が口を挟んでも構わない?」
ゴホン、と咳払いをした俊輔が、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
敬吾はそんな俊輔を見上げ、眉根を寄せる。
「俊輔?」
「大丈夫……あんたが知られたくないことは、言わないよ。ただ、このままじゃ和がちょっと不憫だろうが」
「俺?」
別に、不憫だと思われるようなことは何もない。和は何となく不愉快な気分になった。
意味が判らず俊輔を見据えると、彼は和の前に立ち、その肩に手をかける。
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