ブラッディマリー
「和、お前に、話しておかなければならないことがある」
「何だよ」
肩にかけられた手に、ぐっと力がこもって痛かった。
それを我慢して、和は噛み付くように俊輔の瞳を睨みつける。
──これ以上、わけの判らないことはたくさんだ。
黒澤の家のことも、ヴァンパイアのことも、万里亜のことも、何も知らない自分も、何も判断できない自分も。
俊輔から何が飛び出してきても驚くまい。和は静かにそう決めた。
ゴクリ、と俊輔が息を飲む音が聴こえた。
永い時間を生きてきたこの人がこれだけ緊張するような、何があるって言うんだ──?
渇いた口唇をわなわなと震わせて、ようやく俊輔は声を発した。
「君子を──お前の母親を殺したのは、この俺だ」
一瞬、部屋が明るくなって視界が真っ白になる。
すぐに大きな雷鳴が轟いて、地面が揺れるような衝撃が襲った。
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