ブラッディマリー
 


「和、お前に、話しておかなければならないことがある」


「何だよ」



 肩にかけられた手に、ぐっと力がこもって痛かった。


 それを我慢して、和は噛み付くように俊輔の瞳を睨みつける。



 ──これ以上、わけの判らないことはたくさんだ。



 黒澤の家のことも、ヴァンパイアのことも、万里亜のことも、何も知らない自分も、何も判断できない自分も。


 俊輔から何が飛び出してきても驚くまい。和は静かにそう決めた。


 ゴクリ、と俊輔が息を飲む音が聴こえた。



 永い時間を生きてきたこの人がこれだけ緊張するような、何があるって言うんだ──?


 渇いた口唇をわなわなと震わせて、ようやく俊輔は声を発した。





「君子を──お前の母親を殺したのは、この俺だ」





 一瞬、部屋が明るくなって視界が真っ白になる。


 すぐに大きな雷鳴が轟いて、地面が揺れるような衝撃が襲った。









.
< 281 / 381 >

この作品をシェア

pagetop