ブラッディマリー
 


「俺みたいな純血のヴァンパイアはね、哀しいかな他のものに簡単に心が移らないようにできてる。そりゃそうだろう、容姿も、資質も、力も、人間を遙かに凌ぐ。そんな化け物が、自分よりあらゆる面で劣るものに、心奪われるわけがない」



 離された手のやり場を失い、和はふらふらと尚美のベッドに座り込んだ。


 そんな和をじっと見下ろしながら、俊輔はじっくりと記憶を手繰るように続ける。



「白城の純血のヴァンパイア……百合亜とも、夫婦になってみようかってこともあった。だけどそれは特別な感情があったわけじゃなくて、その方が何かと都合がいいっていう合理主義というか。けど、俺達の間には子どもができなかった」


「……? 色っぽい関係じゃなかった、って……」


「だから、それだけの関係にしかなれなかったんだよ。お前だって、女と寝るのに意味なんかほとんど必要なかったろ」



 苦笑する俊輔に、和はふと自分の行動を省みて密かに恥じ入った。つい今しがた、そんなことをして来たばかりだ。さっきの女との関係が色気のあるものかと問われれば、自分は間違いなくかぶりを振る。

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