ブラッディマリー
 

 自分はずっと、澄人に飼われて生きていくのだと思っていた。自分の吸血の欲求が人一倍強いことを、万里亜は理解していた。外に自由に放たれたところで、度々理性を失い、男を殺して回るのだろう。そんなことになるくらいなら、澄人の傍が一番安全なのだと悟っていたから。


 最近は、兄妹であろうと何であろうと、酔ったように『愛してる』と囁く間の澄人は優しいのだから。


 止まらない血にあがき、もがきながらベッドの上でのたうち回る澄人を見ながら、万里亜は急に怖くなってワンピースを拾い上げると、その場から逃げだした。



 深手を負わせてしまったが、あれくらいで澄人は死にはしない。恐らく、騒ぎを聞き付けて来たメイドに食らいついて、あんな傷はすぐに治してしまうのだろう。


 その澄人が追ってくることは予想がついた。そして、また折檻されるに決まっている。

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