ブラッディマリー
 


 本当は、兄さんに言われて彼から離される度、ここから抜け出したいって思ってた。


 今まさに陥れようとする男が、救い出してくれないものかと。けれど、誰もそんなことに興味はなかったらしく、ただこの身体の上を通り過ぎていくだけ。消えていった男の屍の数は、あたしの絶望の数。


 一生こうなのだという諦めに塗り潰されて、あたしはあたし自身をも何度も殺して来た。


 そうするうちに、忘れてしまっていた。



 あたしは、助かりたかった。



 助かりたくて、闇の中をひたすら駆けていたんだ。それが救いだと判らなくなってしまう程深く、長い長い闇の中を。




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