ブラッディマリー
呆然と、和は立ち尽くしていた。
俊輔の告白に、思わず胸を衝かれる自分がいたからだ。
母は、父のせいで自殺をしたのだと思っていた。が、それは他の誰かの手によるものだった。
しかもそれは、母のことを心から愛している自分の本当の父親の手によるもの──。
俊輔は愛する女を手にかけたその責め苦を、ずっと抱えて生きていかなければならないのだ。ひょっとしたら、息子である自分が死んだ、そのずっと後まで。
それだけで、人殺しだの何だのという陳腐な罵り言葉は片っ端から消えていく。
当たり前に持ち合わせていた善悪は、いったいどこだ?
また、こめかみがずきずきと疼き出す。雨はまだ止まずに降り続けていた。
「何なんだよ、それ。俺に、何を言えって言うんだよ。そんなこと聞かされて、俺にどうしろって言うんだよ!」
責めるように吐き出す一方で、和はこんなことすら無意味だということを、もう判っていた。責めるにしても、相手が判らない。
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