ブラッディマリー
 

 よくよく考えてみれば、労わるべき母をも責めたくなってくるからだ。



 だって、こんなどうしようもない息子の運命を見届けることもせず、彼女はこの世からいなくなってしまったのだから。



 けれど、死人に口なし、というわけではないが、母に対して今さらどうこう考えることもまた無様だった。いい歳をして、親を責めて、そのせいにするのか?


 違う、そうじゃない。



 今さら誰かに謝って欲しいわけでも、責任を負って欲しいわけでもなかった。


 ただ、そんなややこしい人間関係があって、何故自分に最初からそれを伝えてくれなかったのだろう、と和は思った。


 自分の生まれがそんなに複雑なものだと判っていれば、こんなに適当に生きてこなかったのに、と。


 もちろん過ぎた時間に取り返しはつかない。

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