ブラッディマリー
 


 適当に生きてこなかったのに、と思うのは今事実を知ってからの感想であって、実際知らされていたらどんな人生になっていたかなど、誰にも判らない。今よりもっと荒れた生き方をしたかも知れない。だからこそ、知らされず来たのだろうとも、思う。



 頭でそれが判っても、感情がそうはいかなかった。


 しわ寄せのように今苦しいこの感情を、どうにかしたかった。けれど、はけ口が見つからない。


 そんな和が、ぎりぎりの精神状態で、ようやく口を開いた。



「……ヴァンパイアは……吸血鬼は、血がないと生きていけない筈だろ。どうして俺は、この歳まで普通でいられた? どうして今さら、血を啜る身体になった?」



 すると、俊輔は俯いた。



「……君子がそうしたいと言ったんだ。人として育てたいからと」


「それであんた、その通りにしたのかよ」


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