ブラッディマリー
 


「ああ。本当なら、死ぬまでそのままでいられる筈だったんだ。でもまさか、澄人がお前のところにまでやってくるとは思わなかったんだ。白城の人間は、お前の生まれのことを知らなかったから。……君子の産んだ子を、死なせるわけにはいかなかった。だから、眠らせていたお前の血を起こさざるを得なかった。万里亜ちゃんに頼まれるまでもなくな」



 狙われるのは自分だけで、まさか黒澤の家そのものを潰そうなどと、欲の深いことを考えているとは思わなかった。


 俊輔はそう言うと、長い髪をかき上げる。



「黒澤を潰すつもりで黒澤の跡取りのお前にちょっかいをかけたらヴァンパイアだった、向こうはそういう認識だろうな」


「冗談じゃねぇよ……とっくに親交の切れた家のことに、そんなにこだわれるもんか」


「切れたからこそ、こだわるのだろう」



 敬吾が神妙な顔つきで、そう語った。

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