ブラッディマリー
「切れたからこそ、対等な規模で存続し続ける黒澤が邪魔だったのだろう。白城澄人の異常なまでの征服欲は、人間社会でもたいそうな噂になっている。彼の機嫌を損ねることが恐ろしい者は、躊躇いなく奴に尻尾を振りまくっているからな」
「そもそも、表……? での奴は何者なんだよ」
「お前、いい歳してそんなことも知らないのか。敬吾の息子やってるくせに……」
呆れたように、俊輔が息をついた。
……今さっき、母さんを殺したのは自分だと言って泣いてなかったか。
そんな苛立ちを込めて俊輔を睨みつけると、彼は気まずそうにふいと顔を背けてしまった。
敬吾がやれやれと肩をすくめる。
「野党の、藤木代表の秘書をやっている。年老いた藤木の後継者になるともっぱらの噂だ」
「……あんたのライバルってことか。把握したよ」
「ライバルなものか。何歳離れてると思ってる。儂みたいなのより、若くて綺麗な白城澄人の方が分がいいに決まっているだろうが」
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