ブラッディマリー
 

 敬吾がそう言うと、尚美は黙ってベッドに潜り込んでしまった。夫婦のもめごとは後で2人でどうにかしてくれ、と思いながら、和は敬吾の言葉に納得した。



「なるほどね。与党の幹事長で次期総理か、って言われてるあんたとは表でも水と油か」


「そういうことだな」



 が、正直そんなことはどうでもいいのだけれど。


 要は、ここ一連の騒ぎは白城澄人が放った火種のせいということか。


 と、和はさっきからなるべく考えないようにしていた万里亜のことを思った。



 ここまでことを広げるくらいなら、あの男はどうして万里亜を利用したりしたのだろう。


 ただの人間だった俺を殺すだけなら、いきなりやってきて、何も判らないうちに襲うだけでいいのではないか。


 それが、白城と黒澤のことをべらべらと喋り、挙句の果てに自分はこんな身体だ。


 この家に暮らす尚美まで懐柔しようとしていたのだから、時間をかけるだけ無駄ではないのか……?


.
< 305 / 381 >

この作品をシェア

pagetop