ブラッディマリー
 

 和は、さっきから黙って寝たふりをしている尚美に視線を投げた。


 出会ったばかりの頃は、本当に綺麗な女だった。もちろん今は病んでそれどころではないが、健康であれば今もさぞ綺麗な女だっただろうと思う。


 尚美は和にとって色んな意味で特別な女だったが、今彼女を瞳に映しても何の感情もわかない。



 全部、全部、この1ヶ月程で万里亜が変えていってしまったもの。


 もう一度、万里亜と話がしたい……たとえ、さっきの絶望をもう一度食らうことになるのだとしても。



 どんな言葉でもいい、彼女の口から紡がれる言葉こそが、和にとっての真実だった。




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