ブラッディマリー
万里亜と、さっき彼女が引き裂いた通りすがりの人間──だった。万里亜の光のない瞳は雨の夜空の一点をひたすら見つめている。
まるで映画のゾンビのように、左右にふらふらと身体を揺らして歩く万里亜。あてなく彷徨うその姿は、魂を抜かれたようだった。
「……みんな……みんな死ねばいい。あたしを犯す兄さんも……兄さんから助けてくれないお父さんも……あの家から助けてくれない人、みんな」
ズルリ、ズルリ……と死体を引きずっていく万里亜の通った道に、真っ赤な血の跡が残っていた。
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