ブラッディマリー
がくん、と手から重みがなくなった。
万里亜が振り返ると、ずっと引きずって来ていた死体が、溝に足を取られて引っ掛かっていた。
ずっと向こうまで、赤い血の道が見える。これでは澄人が追ってきた時にばれてしまうではないか。
万里亜は苦々しく口唇を噛み締めると、なるべく目立たないように、引きずって来た死体を近くの日本家屋の生け垣に押し込んだ。
それでも、血のにおいに聡いヴァンパイアには、すぐに判ってしまうだろうけど。
ふと顔を上げて、万里亜はその風景に見覚えがあることに気付いた。
──和のマンションの、すぐ近くではないか。
どこへ行こうと考えて逃げ出してきたわけではなかった。
今隠した死体の男だって、どこで出会って、血が欲しかったわけでもないのに何故殺してしまったのか、それさえよく判らないというのに。
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